ています。
しかし、いつも精度良く予測できるとは限りません。図4と図5はそれぞれ一九九六年四月七日21時、四月十二日21時の数値予報天気図です。七日に関東の東にあった低気圧が発達して、十二日には千島の東に達し、またそれとは別の弱い低圧部が日本の東にあります。これに対する予報をみてみましょう。図6は図4の時刻を初期値とする全球モデルによる十二日21時の予測(五日予報)です。低気圧は日本の東にあり発達中で、千島の東での低気圧の発達は予想されておらず、予報誤差は比較的大きくなっています。
図4 1996年4月7日21時の天気図

図5 1996年4月12日21時の天気図

図6 1996年4月12日21時の予測

3、 予測誤差の原因と利用上の注意
このように、予測がうまくいく場合がある一方、予報誤差が大きくなる事例もあります。一般には初期値には存在しないか、または非常に弱い小さな低気圧の発達の予測は予報誤差が大きいことが多いです。
海上の観測データ数は、陸上と比べて非常に少なく、海上にある低気圧の解析が不十分なため、予測誤差が大きくなる傾向があります。一般的には、新しい予報ほど精度がよいはずですが、大気には初期値のわずかな違いによって時間とともに誤差が急速に大きくなるという性質もあり、場合によっては古い予測資料の方が、新しい資料より精度が良いという例もあります。従って中間的な予測を利用する際には、毎日継続的に資料入手していただき、新しい資料だけではなく前日までの資料も参考にしていただくことが重要です。
つまり当日の予測資料が前日のものと大きく異なる場合は予報が難しい事例と考えられ、前日と大きな変化がなく予測が安定している場合は信頼性が高いと言えます、気象庁としては、予測精度を高めるため予報モデルの改良や観測データの解析精度を高める技術開発を継続して行うとともに、利用しやすい予測資料を提供していきたいと考えています。また予報モデルの予測の誤差幅を合理的に推定するアンサンブル予測手法の技術開発の準備も進めています。
数値予報の予測精度の向上には、その初期値となる高い精度の解析値が必要不可欠です。船舶からの気象通報も、より正確な解析のみならず予測値の精度向上にも結び付きますので、今後とも通報に御協力いただきますようお願いいたします。